コストで勝負するのはもっともポピュラーな戦略

加谷珪一の知っトク経営学 第8回
【コスト優位の競争戦略】

 競争戦略の中でもっともポピュラーなのはやはりコスト優位の考え方でしょう。自社の製品やサービスについて、競合他社とどう戦うのかについて考えた時、コスト面で優位に立つというのは基本中の基本です。

他社よりも低いコストで優位に立つ

 ポーター(1947~)は競争戦略を主に3つの項目に分けて考えました。コストの部分に特に焦点を当てた競争戦略を「コスト優位」と呼びます。

 コスト優位は、簡単に言ってしまえば、大量生産・大量販売などによるコスト・メリットを生かし、競合他社より安いコストで製品を提供するという方法です。ユニクロなどは典型的なコスト優位戦略の企業です。

 同じ品質やスペックの製品であれば、コストを安くすれば、その分、価格を下げられますからシェアは拡大するはずです。とにかく割安なコストで競合他社を圧倒し、優位に立つというのは、企業戦略としてはオーソドックスなものといってよいでしょう。

 しかしコスト優位の戦略には欠点もあります。

 価格を下げることはどの企業でも対応が可能です。皆が同じように価格を引き下げる戦略に出た場合、価格勝負の消耗戦になる可能性が高まります。こうなってしまった場合、企業体力によほど余裕がなければ、生き延びることが難しくなります。場合によっては、各社が共倒れという事態にもなりかねません。

 価格を下げた効果は、どの企業にとっても同じですから、一般的に先に仕掛けた方が有利になります。価格優位の戦略を採用できる企業は、最大手の企業か、もしくは圧倒的に体力のある企業に限定されるでしょう。業界ナンバーワンの企業がこの戦略に出た場合、2位以下の企業はかなりの確率で苦しむことになります。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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ただコストを引き下げればよいというわけではない

 これに加えて価格優位の戦略を採用する場合には、製品やサービスの価格弾力性についてよく吟味する必要があります。価格弾力性とは、値段が変わるとどのくらい販売数量が増減するのかを示した数字です。

 商品によっては価格を下げると大幅に販売数量が伸びるものもありますが、一部の商品は価格を変えてもあまり販売数量が変化しません。効果的に値下げを実施するためには商品の特質をよく考える必要があるわけです。

 コスト優位の戦略は、しばしば単純なコストダウンと混同されることがあります。

 確かにコストダウンを実現しなければ、製品やサービスの価格を引き下げるのは困難ですから、コスト優位の戦略にとってコストダウンは重要です。

 しかし、肝心なのは、顧客に同じ製品やサービスを、より安く提供できるという部分です。

 品質を大幅に下げてコスト優位を実現しようとしても、その弊害の方が大きくなる可能性が高まります。まずは規模のメリットを生かすことで、相対的な固定費を安くするというのがオーソドックスな手法ということになるでしょう。

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