経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資教室

ROE(株主資本利益率)を使った投資とは

加谷珪一の投資教室 第17回

 PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)と並んで、ROE(株主資本利益率)も投資指標として頻繁に使われています。
 最近では、公的年金など機関投資家がROEを重視する方針を打ち出しており、これまで株主還元策に消極的だった日本企業も、慌てて自社株買いや増配といった措置を打ち出すようになってきました。

 株主資本利益率とは、文字通り、自己資本(株主のお金)からどれだけの利益を得られたのかを示す指標です。

 会社が必要とする資金には様々な種類があります。工場などの設備を整える費用は、長期にわたってその効果が持続するものですが、逆にいうと、その投資に失敗したら会社の将来が危うくなる支出ともいえます。

 こうした重要な支出に対しては通常、借金ではなく自己資金(株主資本)が用いられます。株主はこうした部分のリスクを取った対価として、配当を受け取ったり、値上がり益を享受したり、議決権という形で経営に参画することができるわけです。



 しかし、通常の運転資金(仕入れてから販売するまでのタイムラグを埋めるための一時的な資金)まで、自己資本でカバーしていては効率が悪くなってしまいます。
 銀行は確実に返済される見込みがある場合には、ごくわずかの利子を払うだけで多額の資金を融通してくれますから、こうした一時的な資金については銀行から調達するのが一般的でしょう。

 したがって企業に投資する投資家にとっては、自分たちが払い込んだ資金がどう活用されるのかが最大の関心事ということになります。そして、この視点に立った指標が株主資本利益率ということになります。

 株主資本利益率は、少ない株主資本でどれだけの利益を上げたのかを表す指標であり、具体的には企業の利益を自己資本で割って求めます。1株あたりの数字で考えれば、1株当たりの利益(EPS)を1株当たりの純資産(BPS)で割ることになります。

 自己資本が少なければ少ないほど、逆に言えば、借り入れが多ければ多いほど、自己資本利益率は上昇します。同じ利益を上げているなら、自己資本が少ない方が効率がよく、このような会社には投資が集まるので、株価も上昇するというメカニズムです。多くの会社がROEを上げるために自社株買いを実施するのはこうした理由からです。

 実はこれまで例に上げてきたPER、PBR、ROEには密接な関係があります。

 具体的にはPBR=PER×ROEという関係が成立しています。またPER、EPS、株価には以下のような関係が成立しています。

・PER=株価÷EPS
・PBR=株価÷BPS
・ROE=EPS÷BPS

 計算が好きな人は、3つの式の関係性を確かめてみてください。ただ、実際に投資をするにあたっては、PBR=PER×ROEという関係が分かればそれでよいでしょう。ROEについて具体的にどう判断すればよいのかについては次回に解説します。

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