市況全般と個別株の動き

加谷珪一の投資教室 第14回

 PER(株価収益率)は個別銘柄の評価にも使えますし、市場全体にも適用することができます。多くの人は、どの銘柄に投資するのかという部分に強い関心を寄せていますが、それ以上に大事なのが市況に関する分析です。市況全般の分析をおざなりにしてしまうと、よい銘柄を選んでも水の泡となりかねません。

 株式投資は企業の成長に期待するものですから、成長できる銘柄に投資できれば、市況は関係ないと思う人も多いでしょう。しかし現実には、市況と関係なく順調に上昇できる銘柄というのはほとんど存在しません。たいていの銘柄は市況全般から影響を大きく受けることになります。

 例えばリーマンショック直後の2009年から2010年頃に株を買った人は、銘柄にかかわらず大きな利益を得た可能性が高いでしょう。筆者もこの時期に多くの銘柄に投資しましたが、数年でほぼすべてが2倍以上になりました。一方、リーマンショック前に仕込んだ銘柄の中には、利益が出ていないものもあります。

 極端な話をすれば、80年代のバブル崩壊直前に株を買ってしまったようなケースでは、当分の間、利益を出すことは不可能です。比較的長期で取り組む個人投資家にとって、どのタイミングで集中して買いを入れるのかは、とても重要な課題といえます。

 タイミングを間違えなければ、多少の銘柄選定ミスは気にする必要はありません。逆に言えば、タイミングを間違ってしまうと、銘柄の選択だけでマイナスを取り返すのは困難です。これまでの記事でも解説したように、PERは市況を分析する有力なツールのひとつです。


 

  PERを市況全般に応用する方法としては、日経平均やダウといった指数のPERの推移を分析するという方法に加え、債券の利回りと比較するという方法もあります。

 債券と株式を比較するには「益利回り」が用いられます。益利回りはPERの逆数で、EPS(1株あたりの利益)を債券における利子と考えた場合の利回りに相当します。例えばPERが20倍の時は、逆数は0.05ですから5%の利回りと考えます。株式は債券もよりもリスクの高い商品ですから、債券の利回りより高い状態が自然です。

 もしPERが100倍であれば、益利回りは1%ですから、場合によっては債券と利回りが逆転してしまいます。この状態は株式が割高と考えられるわけです。

 日本は国債を発行しすぎており、その状態で、量的緩和策を実施していますから、債券市場の価格形成機能が崩壊しています。このため債券市場のとの間で利回りを比較することができないのですが、米国など他の市場では債券と株式の利回り差は重要な情報となっています。

 結局のところ日本株は米国株と連動して動きますから、米国市場について分析することはとても大事です。米国市場における債券と株式の利回り差については、しっかり認識しておいた方がよいでしょう。

 市況全体について的確に把握し、ベストなタイミングで投資することがなによりも大事です。その中で、より成長力の高い銘柄を選別できれば、鬼に金棒でしょう。

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