加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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ボンボンなりの競争が必要

 

 前回は適切な競争環境がないと、コネ社会をさらに助長してしまうという話をしました。コネが横行し、適切な人材登用が行われないと、社会全体が停滞してしまいます。これは日本の政界にもあてはまる問題です。

二世だから能力が低いのか?
 政治の世界において、二世、三世の比率は年々高まっています。現在の政権を見ても、安倍首相を筆頭に、麻生財務大臣、谷垣法務大臣、岸田外務大臣、石原環境大臣、甘利経済再生担当大臣、石破幹事長など、二世、三世がズラっと並びます。

 もっとも政治家の二世、三世というのは日本だけの話ではなく、諸外国でも親のコネで政治家になる人は多いというのが現実です。しかし日本の場合、政治家の劣化と二世議員の増加がセットになっているという印象があります。もしそうだとすると、それは非常に由々しき問題といえるでしょう。

 もし日本の二世議員の質が落ちているのだとすると、結局のところ、適切な競争環境がないことが原因と考えられます。確かに有力者の子供は、他の人材と異なり、地盤、看板を持っていますから、そうでない人と比較すれば圧倒的に有利です。

 その点では、最初から公平な競争ではないわけですが、そのことがすぐに政治家の質の低下につながるとは限りません。

 競争は普通、ある一定範囲のコミュニティで行われます。1億人が1億人に対して競争するということはないのです。競争はある限定的な範囲で行われれば、それで十分な効果を発揮するのです。

 もし各地域で、それなりの数の有力者が存在しており、その子供達が、その中で競争をしなければならないとしたらどうでしょうか?そこで選び抜かれた人物は、それなりの資質や能力を備えているはずです。つまりボンボン同士の中での競争ということです。

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適切な競争というバランス感覚
 しかし、各地域でほとんど競争がない場合、有力者の子供であれば、無条件で政治家になれてしまいます。日本の二世議員に問題があるのだとすると、二世であること、そのものよりも、むしろこうした競争環境の欠如が大きく影響している可能性があります。

 世界的に共通の話ですが、有力者の子供はコネでいい学校に入ったり、いい会社に入ることができます。しかし、有力者の家は、皆がそうしたコネを持っているわけですから、有力者の子供は、その中で競争しなければなりません。

 コネを使うことを前提に、その中で、さらにいい経歴になるよう切磋琢磨するわけです。つまり有力者の子供は、経歴が立派なだけでは不十分であり、突出して立派でなければダメなのです。

 こうした競争を日本の二世議員が経ているのかというと、少々怪しいものがあります。無競争な環境では、どんな階層であれ、優秀な人材が出てくる可能性は低いと考えるべきでしょう。

 日本は競争を否定する風潮がありますが、先にも述べたように、競争社会とは、1億人が1億人と血みどろの争いをするということを意味しているわけではありません。それぞれのコミュニティの中で、適切に競争が行われていればそれでよいのです。

 スポーツの世界もマイナースポーツであれば、競争の範囲は限定的です。しかしその中で競争が機能しなければ、優秀な選手は生まれてきません。

 日本人は競争のあり方について、杓子定規な解釈ではなく、もっと柔軟に考えた方がよいでしょう。要するにバランス感覚の問題です。

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