加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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日本が各国に財政出動を説得するのはリスキー

 

 各国が協調して財政出動を実施するよう、安倍首相が各国首脳を説得しています。伊勢志摩サミットの議長国として、財政出動の合意を取り付け、リーダーシップを発揮したいとの思惑があるようですが、今の日本が置かれた状況を考えると非常に微妙なところです。

背景にあるのは世界経済の成長鈍化懸念
 米国は5月に開催される伊勢志摩サミットにおいて、世界経済の成長鈍化懸念に対処するため、各国に財政出動を求めたい考えです。
 原油価格の下落で資源国の経済はボロボロとなっており、これに中国の失速が加わったことで、世界経済の図式は大きく変わりました。これまでは新興国が世界経済の推進役になると考えられていましたが、今はまったく逆の状況となっています。

 世界経済は、米国の消費のみに依存するという非常に脆弱な状況である、米国の消費が停滞するようなことになれば、それこそ全世界的な成長鈍化に陥ってしまうリスクがあります。また、日本と欧州が量的緩和を継続していることで、各国のデフレはすべて米国に輸出される状況となっています。いくら米国経済の基礎体力が強くても、全世界の景気を背負う余力はないでしょう。

 こうしたことから、米国は財政出動を強化し、需要をかさ上げすることで、現在の状況から打開する必要があると考えているようです。米国単独では効果が限定的ですから、各国に協調した財政出動を呼びかけたいというわけです。

 米国は順調に財政再建を進めており、財政出動の余力があります。ここで世界経済が腰折れするリスクを考えるのであれば、協調した財政出動にはそれなりに意味があるかもしれません。

 しかしこうした米国のスタンスに対して、ドイツは反対の姿勢を強めています。ドイツは米国以上に財政再建に熱心であり、2015年度予算からは事実上国債の発行をゼロにすることに成功しました。つまりすべての歳出を税収でカバーできるという理想的な状況にあり、当然、いくらでも国債を発行して財政出動する余地があります。

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今のところメルケル首相はゼロ回答
 ところがドイツの基本的な考え方は、放漫財政は最終的には経済成長にマイナスというものであり、特に財政状況が悪い国に対しては非常に厳しい姿勢で臨んでいます。ドイツとしては、積極的な財政出動を許してしまえば、ギリシャやスペインなどが、再び放漫財政に戻ってしまうのではないかと危惧しているわけです。

 ここでドイツの説得に乗り出したのが日本なのですが、背景には米国と協調路線を取りたいとの意向があると思われます。しかし、安倍首相がわざわざドイツを訪問し、メルケル首相を説得しようと試みたことを考えると、単なる米国との協調路線だけが理由ではなさそうです。

 やはりここは、5月に開催される伊勢志摩サミットにおいて、リーダーシップを発揮したいという狙いがあると考えるのが自然でしょう。

 日本が世界に対してリーダーシップを発揮することはすばらしいことですが、今回のケースが、それにふさわしい場なのかはについては非常に微妙なところです。というのも、日本は先進国では突出して大きな財政赤字を抱えており、ドイツなど財政再建を実現した国から見ると、いろいろと問題を抱えた国のひとつだからです。

 日本がドイツなどに対して財政出動を強く説得しすぎると、逆に「日本の財政状況は大丈夫なのか」と指摘を受けかねません。つまりやぶ蛇になってしまう可能性があるわけです。

 案の定、メルケル首相との会談では、先方は安倍氏のメンツをつぶさぬようかなりの配慮は示しましたが、財政出動についてはゼロ回答でした。
 サミットでは、米国が強い意志を表明する可能性が高く、財政出動に関する何らかの合意は得られるでしょう。しかし、日本が強いリーダーシップを発揮して、財政出動の合意に至るというシナリオは実現が難しくなってきました。

 日本が、ある程度、財政再建に道筋を付けた状態であれば、伊勢志摩サミットは、安倍氏がリーダーシップを発揮するよい機会だったのですが、そうは問屋が卸さなかったようです。

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