加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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中国株ショックは、日本がいつか来た道

 

 中国株の下落が止まりません。この影響で日経平均も大幅に下落してしまいました。中国は一種のバブル崩壊ともいえる状況になっているのですが、一連の動きは、かつて日本が経験してきたことでもあります。中国株下落の影響を軽視することは禁物ですが、過度に不安視する必要もありません。

多くの国が同じような成長過程を通る
 上海総合指数は6月前半には5000を超えていたのですが、後半から急速に値を下げ、現在は3500前後まで下落しています。中国政府は、株式売買手数料の引き下げや、証券会社によるETF(上場投資信託)の買い支えなど、株価対策を打ち出していますが、あまり効果は出ていないようです。

 中国経済は現在、一種のバブル崩壊過程にありますが、これはかつての日本の状況と非常によく似ています。日本のバブル経済が崩壊した1990年前後、日本国内の総融資残高(金融機関とノンバンクを合わせた数字)は約785兆円でした。当時の日本のGDPは474兆円なので、融資残高はGDPの約1.7倍の規模に達していたことになります。

 一方、2012年における中国の金融機関の総融資残高は約68兆元でした。これにシャドーバンキングによる融資を加えると約87兆元になります。中国における2012年のGDPは53兆元なので、総融資残高のGDP比は約1.6倍と計算されます。
 もしこの数字が正しいとすると、日本がバブル崩壊を起こした時と同じ水準であり、2012年の時点から、中国はいつバブル崩壊を起こしてもおかしくない状況にあったと判断することができます。

 中国政府は何とかソフトランディングさせようと苦心しているわけですが、景気対策を実施すると株価や不動価格が高騰し、逆に景気対策をやめると市場が総崩れになるという板挟みとなっています。

 中国は機関投資家が十分に育っておらず、個人投資家や事業法人による投機の影響が大きいといわれています。このため、一旦、相場が下げに転じてしまうと、売りが売りを呼ぶ展開となりやすいという特徴があります。中国当局は信用不安を防ぐため、証券会社に対する無制限の流動性供給を行うことも決定しました。

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過度な心配は不要だが、市場の回復には時間がかかる
 市場が未成熟であることに起因する一連の出来事は、1960年前後の日本ともやはり似ています。80年代のバブル崩壊が記憶に新しいですが、その前にも、深刻な株価の下落に悩まされた時代がありました。高度成長とのその反動という意味では、むしろこの時代の方が、現在の中国との類似性が高いかもしれません。

 相場上昇前の日経平均株価は300円台でしたが、神武景気と岩戸景気を背景に株価は急騰し、一時は1800円に迫る水準まで上昇していました。証券会社は投資信託の大量推奨販売を通じて相場を煽っており、個人投資家が株式市場に殺到するという状況でした。

 当時の日本市場は、現在の中国市場と同様、非常に未成熟な状況で、機関投資家がほとんど育っていませんでした。個人投資家や事業法人の投機的な取引が中心で、市場のボラティリティが高く、乱高下しやすい状況にあったのです。

 当然、こうした相場は永久に続くものではありません。日本の株式市場は深刻な株価下落に悩まされるようになります(40年不況)。この時には、証券会社による投資信託の買い支え、公的機関による株価の買い支えなど、様々な株価対策が行われましたが、株価はなかなか回復しませんでした。このあたりも、今の中国とよく似ています。

 投資信託の解約が殺到したことで、証券会社による買い支えは限界に達し、山一証券はとうとう倒産寸前まで追い込まれてしまいます。同社の破たんが日本市場全体に波及するのを防ぐため、政府は、日銀による山一への無制限特融を実施しました。中国政府による、証券会社に対する無制限の流動性供給は、かつての日銀特融を思い起こさせます。

 株価の下落は、国内的には大きな問題でしたが、日本市場は今ほど、海外に対してオープンではありませんでしたから、世界市場に対する影響はほとんどありませんでした。今の中国市場も同じような状況ですから、中国株の下落によって、世界経済が大打撃を受ける可能性は、それほど高くないと考えてよいでしょう。

 40年不況の時には株価の回復まで数年を要しています。80年代のバブル崩壊については、対処方法を誤ったこともあり20年以上を必要としました。
 現在の中国が、かつての日本と似ているのであれば、中国株下落を過度に心配する必要はないものの、この影響はかなり長期間にわたって続くと考えた方がよさそうです。

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