加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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ギリシャがIMF向けの返済を延滞。デフォルトになったら世界はどうなる?

 

 6月30日が期限だったギリシャのIMF(国際通貨基金)に対する支払いは、翌7月1日の午前0時になっても実施されませんでした。ギリシャでは5日に国民投票を実施するとしていますが、ギリシャ問題は、今後、どのような展開となるのでしょうか。

本来ならすでにデフォルトなのだが・・・・
 ギリシャは8月末までに、いくつもの借金の返済期限が迫っている状況です。今回、支払いができなかったIMF向けの支払い(15億ユーロ)に続いて、14日には民間向けの債券の償還が、20日にはECB(欧州中央銀行)向けの国債償還(35億ユーロ)がやってきます。

 本来であれば、6月30日の支払いを実施できなかった段階で、デフォルト(債務不履行)ということになります。しかしIMFは国際機関であり、民間の金融機関とは異なり、十分な資本を持っています。このため、資金が返済されなくても、実際にはそれほど大きな影響はありません。

 またEU側は、ギリシャの対応に苛立ってはいるものの、ギリシャがユーロ圏から離脱した方がよいとは誰も思っていません。
 このためIMFは、デフォルトを宣言することはせず、「延滞」という形で、とりあえずの処理を行いました。要するにお茶を濁したわけです。これをやってしまうと、際限がなくなる可能性があり、本来あってはならないことなのですが、政治的駆け引きが優先された状況にあります(ギリシャはそれを分かっているので、こうしたムチャな交渉を行っているわけですが・・・)。

 5日の国民投票で増税や年金カットという緊縮策を国民が受け入れれば、ギリシャ政府はEU側と再び交渉を始めることになります。そこでは様々な駆け引きが行われることになりますから、すぐに結論は出てくることはないでしょう。つまり、EUとギリシャが交渉していた以前の状態に戻るわけです。

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仮にデフォルトになっても影響は限定的
 ここで問題となるのは、ギリシャのチプラス政権です。チプラス政権は、反緊縮策を掲げて政権の座に就きました。しかし交渉の場では、その原則を貫くことができず、緊縮策について国民投票にかけるとして、これを持ち帰ってしまいました。

 ここで国民投票が緊縮策についてイエスとなった場合には、本来であれば、政権は退陣するしか道はなくなります。ただ、ギリシャの国内政治は、混迷を極めていますから、仮に国民投票で緊縮策を受け入れることになっても、チプラス首相は政権に居座るとの観測も出ています。

 一方、緊縮策に反対ということであれば、チプラス政権の立場は維持されますが、ギリシャはユーロ圏から離脱することになるでしょう。ギリシャはつい最近まで軍事政権だった国であり、成熟した民主国家とはいえません。ユーロ圏から離脱することになれば、国内政治は、大混乱となる可能性があります。

 そうなった場合、ロシアなどがギリシャを欧州から切り離す作戦に出てくる可能性があり、地政学的には緊張状態が高まることになるかもしれません。

 ただ、経済的な面に限って言えば、仮にギリシャがデフォルトとなり、ユーロ圏を離脱することになっても、世界への影響は極めて限定的です。

 ギリシャが8月末までに支払わなければならない債務は約100億ユーロに達しますが、そのほとんどはECBやIMFといった国際機関向けです。また、総額3000億ユーロにのぼるとみられる債務全体に対しても、多くが公的機関向けとなっています。
 欧州危機の発生以後、EUでは様々な危機対応システムが整備されてきました。民間の金融機関などが持つギリシャ向けの債権のほとんどは公的機関に移管されています。またギリシャのGDPは欧州全体のわずか1.2%しかありません。仮に、ギリシャがデフォルトになったとしても、影響はごくわずかです。

 もっとも、株式市場や為替市場ではそれなりの動きが出てくるでしょう。また米国は利上げを控えていますから、市場が混乱すると、金融政策のタイミングににも影響を与えるかもしれません。ただ、リーマンショックのような状況になる可能性は極めて低いですから、基本的には安心していて大丈夫でしょう。

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