中国が実質的な量的緩和策を実施?

 中国の景気減速が鮮明になってきたことで、中国政府が対策に乗り出しています。しかし、中国の一連の政策は、世界の金融市場の波乱要因となる可能性もあります。

高成長の歪みと金融危機のバランスをどう取るか
 中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は2015年4月19日、市中銀行から強制的に預かる資金の比率である預金準備率を20日から1%下げると発表しました。同行が預金準備率の引き下げを行うのは2回目です。

 中国人民銀行は、銀行の経営安定化のため、銀行が持つ資金の一定割合を強制的に中央銀行に預金させています。今回の措置は、その割合いを引き下げるというものですから、銀行は、余分に貸し出しにお金を回すことができるようになります。

 中国の2015年1~3月の実質GDP(国内総生産)成長率は、事前に予想はされてはいたものの、前年同期比プラス7.0%と6年ぶりの低い水準にとどまりました。これまで中国は、過剰な投資で無理にGDPの拡大を続けてきましたから、あちこちにその歪みが出ています。

 中国政府は、10%台の高い成長は目指さず、安定的な成長路線を模索していますが、成長率があまりにも鈍化してしまうと、今度は不良債権問題などが表面化し、金融危機を引き起こしてしまいます。このバランスをどう取るのか、中国政府は苦慮しているわけです。

 今回、あえてバブルを拡大させるような措置を行ったのは、景気の冷え込みすぎを当局が危惧したからです。一連の預金準備率の引き下げ効果は大きかったようで、とりあえず中国の株式市場は上昇が続いています。

 ただ、中国の景気減速は、中国以外の地域にも様々な影響を与えています。市場関係者が気にしているのは米国の金利への影響です。中国が米国債の売却に動いており、場合によっては米国の金利が変動するリスクが出てきているのです。

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中国による米国債売却が与える影響
 これまで中国は、人民元の上昇を防ぐために、積極的に人民元売り・ドル買いの為替介入を行ってきました。しかし、景気の減速感が顕著になってきたことから、このところ為替市場では人民元安が続いています。
 このため中国はドル買い介入をストップさせており、これによって中国の米国債の保有残高が減少しているのです(介入で買ったドルは通常、米国債で運用される)。

 また、中国から投機資金が逆流しており、これが米国債の売却を加速させているという見方も出ています。
 これまで中国に対しては、高い経済成長や人民元高を見越して多額の資本が流入していました。しかし、中国景気失速が明らかになったことで、これらの投機資金が逆流し、これに伴ってドルを調達する必要に迫られた人民銀行が、米国債を売却しているというのです。

 いずれにせよ、米国債の最大の保有者である中国が売却を進めていくと、米国債の金利が上昇する可能性があります。
 米国は、いつ政策金利を引き上げるのかというタイミングをめぐって非常に微妙な時期にありますが、実体経済以外の要因で金利が早く上がりすぎてしまうと、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げタイミングにも影響を及ぼすかもしれません。

 また長期的には、中国景気減速が米国のインフレ率低下を引き起こすと見る関係者もいます。現在の中国は、量的緩和策を行っている状態に近く、事実上のデフレの輸出になってしまうからです。

 日本、欧州に加えて中国も金融緩和を強化するということになれば、各国のデフレを、すべて経済が好調な米国に押し付けるという図式が成立します。ここで中国による米国債売却が、金利急騰の引き金を引いてしまうと、好調な米国経済の調子が狂ってしまうかもしれません。