加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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元官僚のコメンテーター番組降板論争の捉え方

 

 「報道ステーション」の番組出演をめぐって、キャスターの古舘伊知郎氏とゲストコメンテーターの古賀茂明氏が番組中に論争するという一幕がありました。これを、きっかけに、政府からの圧力があったのかについて、ちょっとした議論となっているようです。

特定のコメンテーターを重用する番組の構造
 コメンテーターの古賀氏は、官邸からの直接的な圧力で番組を降板させられたと主張しており、古舘氏がこれを否定するという形になっています。当然、菅官房長官はこの件を全面否定しています。

  政治権力にはある程度の暴力性が伴いますし、日本は先進国としては民主主義が十分に成熟していない面がありますから、権力側からメディアに圧力がかかることはあり得る話です。しかし、古賀氏が言うような形で直接的に官邸が圧力をかけることはほとんどないというのが現実でしょう。

 もしそ のような圧力をかけるとすれば、人から伝聞で意向が伝わるような狡猾なやり方をするはずで、直接証拠が残るようなやり方は賢い政治家なら避けるはずだからです(中には気が短く、こうした立ち回りが下手で、意図せずして直接的な圧力をかけた形になってしまう政治家もいますが・・・)。

 むしろ日本の場合には、直接的な圧力がないにも関わらず、ムラ社会的な同調圧力で、自主規制するという問題の方が大きいでしょう。

 今回の一連の出来事は、直接的な圧力の有無というよりも、テレビ番組が作られる構造と、官僚出身のコメンテーターの関係という、別な面での捉え方をした方がよさそうです。

 よく知られているように、テレビ局は、電波の割当を政府にコントールされており、これを失ってしまうと、これまで得てきた収益を確保できなくなります。このため、報道内容にはことのほか気を遣います。

 事なかれ主義といってしまえばそれまでですが、何らかの主張に一定のニーズがあることが分かっており、それを番組に織り交ぜたい時は、自分達ではなるだけそれを主張せず、その意向に沿った発言をしてくれる出演者を探そうとするわけです。

 これは報道に限らず、バラエティも含め、あらゆる番組がそのような構造を持っています。番組が意図する企画や、視聴者が望むであろう映像にうまく合致できたタレントは、番組に引っ張りだことなり、そうでないタレントには声がかからなくなります。

 こうしたテレビ局側のニーズにうまくフィットしたのが、古賀氏だったわけです。

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圧力の有無というよりプライドの問題?
  日本人はまだまだムラ社会における「お上」意識が強く、元官僚という肩書きは、視聴者に対して大きな影響力を持ちます。これまで公務員として給料をもらっていた人が、突然、政府批判の急先鋒というのも考えてみればおかしな話なのですが、視聴者には確実に一定のニーズがあるわけです。

 こうした人が、バンバン政府を批判してくれれば、テレビ局としてこれほどありがたい存在はありません。古賀氏が引っ張りだこになったのは理由があるわけです。

 つまりコメンテーターも一種の商品ということになるわけですが、当然のことながら商品には旬というものがあります。

 バラエティ番組のタレントはある意味でビジネスマンですから、テレビ局はお客さんです。このため、常にテレビ局が求めるキャラクターは何かを考え、自分がそれを演じられるように努力しているわけです。また行き過ぎると思うと抑制をかけることになります。

 コメンテーターの中にもこのようなビジネス感覚に鋭い人もおり、こうした人は長くテレビで使ってもらえます(元エコノミストでオタクキャラで有名な人はまさにこのタイプです)。

  しかし高級官僚出身者はプライドが高い人が多く、こうした感覚を持っていないこともしばしばです。古賀氏がそうだと断定するつもりはありませんが、早い段階で職を辞した官僚の中には、在籍していた役所の自身に対する処遇について不満を持っている人も多く、そのような人は発言が過激になりがちです。

 つまり、良い意味でも悪い意味でも、商品として発言している意識は乏しいわけです。

 官邸からの圧力があったにせよ、なかったにせよ、テレビ朝日側が、古賀氏のキャラクターをこれ以上使い続けることは得策ではないと判断した可能性が高いと考えてよいでしょう。しかし古賀氏にとってはこれは受け入れがたいことだったのかもしれません。

 わたしたちは、今回の一連の出来事を通じて、情報というものは商品であり、人為的に「作られる」ものであることをよく理解した方がよいでしょう。
 そして、作られた情報というのは、テレビ局が、多くの人の意向を無視して一方的に作っているのではなく、その先には、そうした作られた情報を消費したがっている私達顧客(視聴者)がいるということを忘れてはなりません。

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