経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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国のために戦う日本人の割合は世界最低?

 日本人で「国のために戦う意思」を持つ人の割合は世界最低だったという調査結果が話題となっています。しかし、調査結果をよく見ると、むしろ別な部分での日本人の特徴が際立っています。

分からないという人の割合が突出して高い
 調査を行ったのはWIN―ギャラップ・インターナショナルで、64カ国を対象としています。「自国のために戦う意思がある」と回答した人の割合は、日本は11%で64カ国中最低となりました。

 全体的に見ると、経済水準が低く、政情が不安定な途上国ほど、戦う意思のある人は増える傾向にあり、パキスタンは89%、中国は71%、ロシアは59%でした。
 民主的な先進国は総じて低く、ドイツは18%、英国は27%、フランスは29%となっています。先進国では米国だけが例外で44%と比較的高い数値になっています。それにしても、日本の低さは突出して目立ちます。

 しかし、日本人は確固たる意思を持って戦わないと回答しているわけではありません。日本人は「分からない」と回答した人の割合が47%にも達しており、こちらも64カ国中ダントツのトップです。

 他国は「分からない」と回答した人の割合は10%台というところが多く、高くても30%である。日本の47%という数字は突出している。意見をはっきり表明しない日本人の傾向が顕著に表れています。

 もうひとつ、日本に特徴的なのは、年齢分布が偏っているという点です。

 他の先進国は、戦う意思のある人の割合は、年齢によって大きな違いは見られません。しかし日本の場合、24歳以下で「自国のために戦う意思」ある人はわずか6%しかなく、45~54歳でも8%とかなり低い数値です。一方、55~64歳になると、この数字はいきなり14%に跳ね上がり、65歳以上もほぼ同率となっています。

 要するに高齢者だけが戦う意思があると回答しているわけです。

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意思がハッキリしていないのはマイナスになる
 これは、現在の高齢者が育った時代環境に大きく影響していると思われます。

 55歳の人は1960年生まれなので当然のことながら戦争の経験はありません。65歳でも1950年生まれなので、終戦からすでに5年が経過しています。今の日本では老若男女問わず、ほとんどの国民が戦争体験を持っていません。

 しかし、高齢者は自身は直接戦争を体験していないものの、身近な人で従軍経験者がたくさんいたと考えられます。昭和の時代は「戦争を知らない子供たち」という言葉が流行り、何かにつけて「今の若い人(現在の中高年)は戦争を知らないから」と戦前世代に言われ続けました。こうした背景が多少影響しているのかもしれません。

 まとめると、日本は他の先進国に比べて、世代間での意識が大きく異なっており、全般的に明確な意思を持たない人が多いということが分かります。

 日本はなかなか意思決定ができなかったり、社会的合意を得るのが難しい社会といわれています。こうしたアンケート結果を見ると、それがハッキリします。

 それが日本の特徴だといってしまえばそれまでですが、こうした特徴は、グローバルな現代社会では他国との交渉で非常に不利になります。意思がはっきりしない人は、何をするか分からないので、リスクが高いとみなされてしまうからです。

 「どちらともいえない」「わからない」といった回答はなるだけ避けるということを、わたしたち心がけた方がよいかもしれません。

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