経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. トピックス

書店を利用するのは10代、ネット購入は中高年

 ネットの購買に関する、当たり前といえば当たり前、意外といえば意外という調査結果が出ています。書籍の購入にインターネットを使うのは中高年で、10代はリアルな店舗を好むというものです。これはにはどんな背景があるのでしょうか。

書店で本を買うのは圧倒的に若者
 日本通信販売協会によると、全国の10代から60代までの1000人のうち、過去1年間に本や雑誌を買ったという人は715人だったそうです。
 本や雑誌の売上げが減少していると言われてから久しいですが、7割の人はそれなりの頻度で本や雑誌を買っているわけです。

 さらに、購買者の中で、ネット通販の利用率がもっとも高かったのは40代で58%でした。次に高かったのは50代で53%。10代は少なく36%にとどまっています。

 一方、書店で本を買ったという人は、10代では何と83%に達しており、40代の68%、50代の63.8%を大きく引き離しました。このデータには電子書籍は含まれていないのですが、電子書籍を購入する人の割合はどの世代も10%程度なので、全体的な傾向に変化はありません。
 
 10代のネット利用が少ない理由ははっきりしています。それは決済の問題です。

 10代は個人でカードを作ることが困難ですから、カードの保有率が他の世代より低いという特徴があります。20代の男性は75%の保有率がありますが、10代でカードを保有しているのは2割程度です。プリペイド方式などもありますが、あまり普及しているとはいえない状況です。

 しかし、書店の購入が20代になると激減するというわけではありません。書店で購入する人は20代でも78%に上っています。つまり若年層はカードの有無にかかわらず、書店で購入しているということになるわけです。これは、若年層の行動パターンが大きく影響している可能性が高いでしょう。

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街は静かになってくる?
 10代は、学校の行き帰り以外にも、遊びを含めて様々な場所に出かけていきます。外出先で入った書店で本を購入する機会が多いのはある意味で当然のことです。
 20代になると仕事を持つ人が増えてきますが、まだまだ好奇心旺盛ですから、やはりあちこちに出かけていきます。

 これに対して、中高年は基本的に会社と家の往復ですから、書店に行く時間がないのかもしれません。

 そうなってくると、ネット=若年層という図式はもはや成立していないということになります。あまり外出しない中高年は、PCを中心に家でネットを多用し、若年層は外で買い物をしています。
 当然、外ではスマホを使いますから、ネットの購買もスマホ中心ということになるでしょう。

 こうした動きは、街全体の雰囲気にも大きく影響してくるかもしれません。基本的に今の市場で購買力があるのは中高年だけですから、あらゆるビジネスが中高年に向けたサービスを強化しています。しかし中高年は、昔と比べて元気になっているとはいえ、あまり外に出てきません。

 そうなってくるとリアルな店舗は、なかなか出てこない中高年をわざわざ外出させるほどの魅力的なモノを提供するか、そうでなければ、数少ない若者を奪い合うという構図になってしまいます。これはビジネスとしてかなり厳しい環境です。

 そうなると企業は、家にいる中高年を対象に、まずますネット通販やテレビ通販などに力を入れるようになってきます。日本の町並みは、これからどんどん静かになってくるかもしれません。

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