加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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近い将来、人工知能が全人類の能力を上回るという説はホント?

 

 急速に発展する人工知能の分野において、驚くべき予測が出てきました。2045年頃には、人工知能の能力が全人類の能力を超えてしまい、人工知能が考えていることを人間が理解できなくなるというものです。
 ちょっと聞くと荒唐無稽にしか聞こえない話なのですが、主張している人物の話を聞くと、内容はあながちインチキではありません。

人間の脳とコンピュータはどれほど違うのか
 この説を提唱しているのは、米国の著名な発明家で、現在はグーグルで人工知能の研究に携わっているレイ・カーツワイル氏(写真)です。その内容をごく簡単に説明すると以下のようになります。

 現在、私たちが使っているパソコンのCPU(中央演算処理装置)には約10億個のトランジスタが集積されています。一方、人間の脳には1000億個近い神経細胞があるといわれています。つまり人間の脳細胞と同じ水準まで回路を集積できれば、理屈上、コンピュータは人間と並ぶわけです。

 ここで多くの人が、神経細胞の数とコンピュータの回路数が同じになったからといって、コンピュータが人間ように活動できるのかと疑問を持つと思います。しかし、これがそうでもないのです。
 人間の脳とコンピュータではまったく動く仕組みが違うと思われていたのですが、最近の研究では、人間とコンピュータに大した違いはないことが分かってきています。

 一見複雑に見える人間の脳の働きも、単純な神経細胞の組み合わせで成り立っており、神経細胞の数と同じだけの素子を集積できれば、人間の脳ミソをシミュレーションできる可能性があることがわかってきたのです。

 もちろん筆者は、人間の複雑な思考をすべてコンピュータで置き換えられると主張するほど、おめでたくはありません。しかし、私たちの思考は、私たち自身が考えるほど、複雑ではないということも知っておく必要があると思います。

 日本ではまだサービスが始まっていませんが、無料もしくは定額料金で音楽が聞き放題となるSpotifyというサービスがあります。ここには、自分が聞いた曲の履歴などから、自分の好みの曲を自動的に選曲してくれる、簡単な人工知能的サービスがあるのですが、この能力が驚くべき水準なのです。

 筆者は、結構音楽好きで、自分としては、音楽に対してそれなりのこだわりを持っていると自負していました。また自分の好みはかなり複雑であるとも思っていました。しかしSpotifyが繰り出してくる「筆者好み」の曲はどれもドンピシャリで、正直、筆者は打ち負かされてしまいました。

 音楽の好みという限定された分野ではありますが、所詮、人間が考えていることなど、人工知能にとっては、お見通しだったのです。

katsuwairu

知識だけに頼る仕事は危ない
 話がそれましたが、もし1台のコンピュータが持つ回路の数が、地球上に住む、すべての人間が持つ脳細胞をすべて足し合わせたものよりも多ければ、理屈上、全人類の知能をコンピュータが上回るということになります。

 コンピュータの世界には、どの程度の期間で能力が何倍になるのかを示すムーアの法則と呼ばれるものがあります。
 もしこの法則が今後も適用可能であり、2050年頃には人口が100億人になると仮定すると、1台のコンピュータが持つ回路の量は、100億人の脳細胞の数(100億人×1000億個)個を超えることになります。カーツワイル氏の予測はこうして生まれました。

 実際、計算を簡略化した形で、筆者も計算してみましたが、確かに2050年頃には、1台のコンピュータの能力が、100億人分の脳細胞の能力を上回ります。

 これは机上の空論であり、単なる数字のお遊びにすぎません。しかし、この予想は私たちに多くのことを問いかけてもいます。人工知能の能力は、想像を超えるレベルで向上してくる可能性があり、わたしたちは、今からそれに備えておく必要があるということです。

 具体的には、できるだけ早く、知識にのみ依存する仕事のやり方から脱却することです。例えば、弁護士が持つ法律の知識、医師が持つ医学的知識、会計士が持つ会計的知識は、いとも簡単に人口知能に置き換えることができます。
 弁護士の世界であれば、法律知識や合理的判断、状況の分析などは人工知能にまかせ、「知恵」の部分で勝負できる弁護士が、勝ち残っていくことになります。

 悲観的にばかり考える必要はありませんが、お勉強的な知識にのみ依存する仕事のやりかたをしていた人は、自分の付加価値について、冷静に見つめ直した方がよいかもしれません。

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