ホンダのジェット機参入は成功するか?

 ホンダは2014年5月20日、同社のグループ企業が製造する小型ビジネスジェット機「HondaJet」の量産1号機を公開しました。同社の航空事業参入は、創業者である本田宗一郎氏の悲願であり、同社が長年をかけて準備してきたものです。

 この新しいジェット機は、航空業界に新たなイノベーションを持ち込むと期待される一方、リスクも指摘されています。その意味で、このビジネスがどのような展開を見せるのか要注目といえるでしょう。

新しいデザインは業界をあっと言わせた
 HondaJet最大のイノベーションは、エンジンの配置です。一般的なビジネスジェット機の多くは、胴体の後部にエンジンを配置しています。大型旅客機は主翼にエンジンを装着するものが多くなっていますが、エンジンの場所は主翼の下です。

 主翼の上面にエンジンを配置したものは、戦前の飛行艇などでは見られましたが、最近の航空機ではほとんど例がありません。

 ホンダによると、主翼上面にエンジンを配置することで、胴体後部の支持構造が不要となり、内部スペースを最大化できるとしています。また、高速飛行時の衝撃波も最小限に抑えることができるので、燃費効率が高くなるそうです。

 ただ、ホンダがこのような新しいデザインを発表した時には、航空業界からは疑問の声も上がったそうです。航空業界は実は非常に保守的な体質です。安全第一ということもあるのでしょうが、現在主流となっているデザインを変更することにはアレルギー反応を示す技術者が多いといわれています。

 要するに「今のデザインでうまくいっているのだから、なぜわざわざデザインを変更するの?」「実際に運用してみないと分からない欠点もあったりするので、従来のデザインの方が無難なのでは?」というわけです。

 ホンダは最近ではファミリー向けの車を得意としていますが、かつては、独自技術を満載した特徴のある車を作っていました。業界の常識を打ち破った今回の新しい試みは、かつてのホンダを彷彿とさせる取り組みといえるでしょう。

hondajet
ビジネスジェットはもはやタクシー?
 HondaJetは小型で低燃費ですから、ホンダの車にあてはめればシビックということになります。シビックは驚異的な低燃費で一気に米国市場に普及しました。確かに、燃料価格の高騰が続いている今、低燃費の航空機が求められているのは間違いありません。

 しかし航空機の市場はもっとドラスティックに動いています。主力市場の米国では、ビジネスジェットのニーズが急拡大しており、幅広い層にまでビジネスジェットの利用が広がっています。低燃費は重要なファクターですが、市場の裾野拡大に伴って低価格であることもより重要になっています。

 航空機の値段は、数や条件によって大きく変わるので一概には言えませんが、HondaJetの参考価格は450万ドル(約4億5700万円)と決して安くありません。また多額の開発費がかかっているので、思い切って値下げをしてしまうと、採算が取れなくなる可能性もあります。

 航空機の市場はなかなか厳しいのです。航空機がタクシー化するなか、ホンダのイノベーション路線がどれだけ通用するのか、今後の展開に注目が集まっています。