加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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世帯の平均貯蓄額1739万円をどう見る?

 

 総務省は5月16日、2013年の家計調査報告(二人以上の世帯)を発表しました。それによると、1世帯あたりの平均貯蓄残高は1739万円となり、前年と比較して4.9%増加したそうです。

 平均貯蓄額が1739万円と聞いて、あまりに非現実的と思った人も多いかもしれません。実際その通りで、この数値はいわゆる平均的な人の実態を表してはいません。こうした統計を見る場合には、前提条件がどうなっているかをよく知る必要があります。

平均値であることと、高齢者を含むことに注意が必要
 まずこの調査は二人以上の世帯が対象ですから、単身者の世帯は対象外です。単身世帯は若い人に多いですから、当然、貯金は少なくなります。家族を持った人は年齢が高めになりますから、必然的に貯蓄額は多くなります。

 また平均値というところも少々クセものです。平均値は、ごくわずかでも数値が大きい人がいると大きくズレてしまうという特徴があります。皆が800万円くらいだとしても、数十億円という人が何人かいるだけで、平均値は大きくなってしまうわけです。

 さらに日本の場合には、資産の多くを高齢者が保有しているという事実があります。この統計を働いている世代の人に限定すると、平均値は大きく下がるはずです。

 調査の対象を勤労者だけにし、平均値ではなくより実態を反映しやすいという中央値を用いると、貯蓄残高は735万円となります。「私はそんなに持っていない」と思った人も多いかもしれませんが、世の中には、年収800万円の共働き夫婦という世帯もありますから、このような数値に落ち着くようです。

 ちなみに、世帯あたりの平均貯蓄残高はここ1年で大幅に上昇しました。それは、アベノミクスによる株高で有価証券の評価額が上がったことが主な原因です。

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アベノミクスの恩恵を受けたのは今のところ富裕層のみ
 日本は人々が保有する資産のほとんどが銀行預金となっており、米国などと比べると株式の比率が低いことで知られています。

 年収3000万円以上の世帯が保有する金融資産のうち有価証券の割合は18.9%に達していますが、100万円以下の世帯では約3%しかありません。
 この数字は中間層になってもあまり変わらず年収600万~800万円の世帯でも4.8%程度です。つまり、日本で株式を持っているのはごくごく一部の富裕層なわけです。

 アベノミクスによる株高で有価証券の残高は約2割増加しました。預金の絶対額はそれほど増えていませんから、貯蓄残高が増えたのは、株高が主な原因ということになります。つまりアベノミクスによる株高で恩恵を受けたのは、ほとんどが富裕層という解釈になります。

 確かに株価の上昇が始まると、百貨店における高額商品の売れ行きが急に増え始めました。これは上昇した株を売って儲けた富裕層が多かったということを間接的に示しているといえるでしょう。

 中間層以下の世帯も株式を保有する米国の場合、株価が上昇すると、すべての世帯に恩恵があります。このため株価の上昇は消費の拡大につながり、ひいては経済成長の原動力になります。

 しかし日本の場合には、株高の恩恵を受けるのは富裕層だけですから、経済政策の効果が実感できるのは給料だけです。

 今年の春闘では賃上げを行った企業もありましたが、中小企業も含めてすべての企業が賃上げに踏み切っているわけではありません。その一方で、日銀の量的緩和政策により物価は着実に上昇を続けています。

 給料が上がっても、物価が高くなると生活上の豊かさを感じることができません。株式を持っていない層が、アベノミクスの恩恵を感じることができるのは、当分、先のことのようです。

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