加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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夫婦関係を表す漢字の1位は「忍」というアンケート結果から見えてくるもの

 

 先日、ちょっと面白いアンケート結果が発表されていました。夫婦関係を表す漢字について聞いたところ、1位となったのは男女ともに「忍」なのだそうです。
 昨年の調査でも、忍は女性で1位、男性で2位ですから、これはかなり確立されたイメージと考えてよさそうです。

必ずしもネガティブな意味ではないが・・・
 「忍」という漢字には奥ゆかしい印象もありますが、やはり我慢というイメージも出てきます。夫婦を象徴する言葉としてはちょっと意外な感じがしましたが、アンケートの対象となっている人たちのプロフィールを見ると、納得できる結果といえるかもしれません。

 この調査を行ったのは、シニア向け宿泊予約サービスを提供する株式会社ゆこゆこです。同社の50代以上のメルマガ会員約2000人に対して調査を行った結果なのだそうです。
 50代以上といってもいろいろです。中には70代、80代の人もいるでしょうから、このような世代の人たちにとっては「忍」という考え方はごく自然なことなのかもしれません。

 この言葉を選んだ理由を見てみると、必ずしもネガティブにこの言葉を捉えているわけではないようです。「自己主張が強いと円滑に進まない。多少の我慢がうまくいくコツ」「お互い生まれも育ちも違うので、我慢しあえる時は我慢をして無理を通さない事が必要」「お互いを思いやる気持ちが忍に繋がる」といった感じです。

 自分を少し抑制することでお互いの生活がうまくいくという、いってみれば「譲り合いの精神」もしくは「和の精神」ということにでもなるでしょうか。譲り合い、和の精神という形であれば、50代以上の人たちに限った話ではなく、若い世代の人にも共通の、日本人ならではの認識といってよいでしょう。

 しかしながら、現代社会は変化が激しく、昔ながらの和の精神が発揮できない世の中になりつつあるのも事実です。日本らしさが失われていると嘆く声も聞かれます。
 しかし、伝統というものは、常に変化することで維持されるものでもあります。日本らしさを残していこうと思うのであれば、逆に、時代にあわせてその価値観を少しずつ進化させていく必要があると筆者は考えます。

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選択肢が存在すると人は精神的に豊かになれる
 夫婦を例にとって考えてみましょう。夫婦のイメージとして「忍」の字が一位になるということは、結婚して長く一緒にいることが所与の条件になっていることを意味しています。
 つまり、結婚は、ある時期までに必ずしなければならないものである、ということを皆が受け入れており、そうであればこそ、あまり自己主張はせず、多少は我慢した方がうまくいくという考え方になります。

 ここでは、納得できないので結婚しない、あるいはうまくいかなかったらやり直す、という選択肢は入っていない可能性が高いのです。
 離婚を推奨するわけではありませんが、人と人との関係ですから、うまくいかないこともあり得ます。ダメだったらやり直してみるというのもひとつ考えですし、納得できるまで結婚はしないというのも同様でしょう。

 もしある年齢までの結婚が所与の条件でなければ、夫婦をあらわす漢字は「忍」ではなかったかもしれないわけです。

 価値観が多様化する時代においては、ひとつのライフスタイルを所与のものとしてしまうといろいろと弊害が起きてきます。むしろ、ライフスタイルの多様化を受け入れてしまった方が、結果として「和」や「忍」の精神も生かしやすくなるのです。

 これは会社の就職についても同じ事が言えると思います。納得できない会社に入っても、多くの人は、せっかく入った会社だからと無理して「忍」の精神を発揮してしまいます。就職は一生を左右しますから、必死になって就活も行うことになります。

 すぐに投げ出したり、テキトーな気持ちで就活するのは、もちろんよくないのですが、もう少し就職の選択肢に幅があれば、あるいは就職後、いつでも別なキャリアを形成できる見通しが立っているのであれば、仕事に対する考え方はもう少し柔軟になるはずです。

 価値観が多様化する社会では、目の前に存在していることを当たり前とせず、一歩引いて考えてみるという姿勢が大切です。多くの人がそれに取り組むようになれば、いろいろなシステムがもう少しスムーズに動くようになるでしょう。

 ちなみに、筆者が夫婦関係を表す感じで思い浮かんだのは「信」で、私の奥さんは、同じ「しん」でも「真」という漢字でした。

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