加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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ブラック企業かどうかを決めるのは自分

 

 ブラック企業が社会問題になっていることを受けて、ブラック企業かどうかを診断してくれるというサービスが多数登場しています。必要に応じてこうしたサービスを利用するのはよいことなのですが、これに依存してしまうのは逆に危険です。

重要な判断を他人に任せてはダメ

 なぜなら、ブラック企業かどうかを決めるのは最終的に自分自身であり、この大事な部分を他人に依存してしまうと、自分自身をコントロールできなくなってしまうからです。

 筆者は、ブラック企業にもいいところがあるなどと主張したい訳ではありません。むしろ逆です。

 もし自分が働いている職場が、自分にとってはどうしても耐えがたいものであり、ブラック企業に思えたとしましょう。ところが、このような「権威のありそうな第三者」の意見では、ブラック企業ではないと認定されていたらどうなってしまうでしょうか?

 ブラック企業ではないと認定された会社で耐えられない自分は、本当にダメ人間なのだと自分をさらに追い込んでしまうことになります。日本では何かと公的なものや、権威のある人に判断を仰ぐ傾向が強いですが、これはある意味で大変危険な風潮なのです。

 ブラック企業かどうかを決めるのは自分自身であって、他人ではありません。自分にとって耐えがたい会社だと判断されるのであれば、その会社は勇気を持って辞めるのが正しい選択です。

 自分にとって耐えがたいと思っていても、他の多くの人にとってはそうでないという場合もあるでしょう。要するに、キツイと思っている本人だけが、一人で甘えている状態です。もしそうであった場合には、仕事を投げ出したしまった結果は、やはり本人が受け止めるしかありません。

お金を嫌う風潮がブラック企業を生み出す

 もっとも、ブラック企業といわれる会社の多くは、グレーゾーンどころか、法的にアウトという状況です。ブラック企業などというスマートな言葉よりも、むしろ奴隷労働といった方が適切でしょう。

 マフィアなど犯罪組織ではない普通の企業でこうした労働慣行が横行しているのは、先進国では日本だけともいわれています。そうなってしまう理由の一つが、お金に関する話題を嫌う社会風潮です。

 日本人の多くは、会社の仕事を金銭で評価することを嫌います。「社員は家族」という言葉がいい例ですが、金銭を媒介にしたドライな関係ではなく、家族的な仲間意識を重視するところも少なくありません。

 こうした環境は、うまく作用すれば、いい効果をもたらすかもしれませんが、悪く作用すると、従属的な人間関係を生み出してしまいます。「家族なんだがらどんなにつらくてもガマンしろ」という形にもなりかねないのです。

 地域の共同体で、親の代から周辺のことをよく知っているというような環境であれば、こうした体制も問題ないかもしれません。しかし、お互いをよく知らない相手がランダムに集まる企業でこのような疑似家族や疑似共同体を作ってしまうと、今度はそこから逃れることができなくなってしまいます。

 労働を提供した分については、お金で対価をもらい、仕事の評価は金額の多い少ないで表現する。確かにドライで味気ない感じもしますが、実はこのようなドライな関係性を保つことが、最終的には人間の尊厳を守り、奴隷労働から人を解放することになるのです。

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