加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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日銀がまさかの追加緩和。背景には何が?今後の市場はどうなる?

 

 日銀は2014年10月31日の金融政策決定会合で、追加緩和の実施を決定しました。ほとんどの人が今回の会合での追加緩和決定はないと考えていましたから、市場では驚きが広がっています。筆者も非常に驚きました。今回、追加緩和を決定した背景には何があるのでしょうか?

このところ物価上昇ペースが鈍化していた
 日銀は昨年の4月から量的緩和策を実施してきました。これは日銀が国債を市場から買い取り、その資金を市場に供給することで、市場にインフレ期待を発生させるという政策です。

 インフレ期待というのは、将来物価が上がると皆が予想している状態のことを指します。将来、物価が上がれば、実質的に金利が下がったことと同じになりますから、これは金利引き下げと同じ効果を持ちます。
 日本では株の保有者は富裕層に限定されていますから、あまり効果はありませんが、インフレ期待の増加がで株が上がり、含み益の増加によって消費が増えるという効果も狙えます。

 実際、日本でも円安と株高が進み、特に円安の進行は、物価に大きな影響を与えました。円安で輸入物価が上昇し、日本の物価も上昇を開始したのです。しかし残念なことに、物価の上昇が持続的な経済成長に結びつくという状況にはなっておらず、設備投資もあまり増えませんでした。

 このため物価の上昇に賃金が追い付かず、肝心の個人消費がなかなか増加しませんでした。ここに消費税の増税が加わりましたから、物価上昇ペースは鈍化してしまったのです。

 日銀が追加緩和を発表した同じ日に、9月の消費者物価指数が発表となりましたが、代表的な指数である「生鮮食料品を除く総合(コア指数)」は前年同月比3.0%の上昇にとどまりました。7月は3.3%、8月は3.1%でしたので、物価上昇の伸びは確実に鈍化していることが分かります。

 日銀では消費税による物価上昇を2%程度と見ているので、消費税の影響を除いた物価上昇率は 1.0%ということになります。このままでは物価上昇率が1%を切る可能性も高ってきており、物価目標の達成はかなり難しい状況といってよいでしょう。

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円安が進めば確かに物価は上昇するが
 ただ、そうだからといって、日銀は安易に追加緩和をしたいとは思っていませんでした。これまでは追加緩和がいつあるのだろうか?という期待を市場に持たせることが可能であり、それによって市場をコントロールすることが可能だったからです。

 しかし現実に追加緩和を実施してしまうと、日銀には大きな手立てが残っていません。もし今回の追加緩和で目立った成果が得られなかった場合、さらに規模の大きい追加緩和を市場から要求される可能性もあります。そうなってしまうと、際限なく追加緩和を繰り返すことになり、最終的には、インフレを加速させてしまう危険性もあります。

 今回の決断をめぐっては、市場では様々な噂が出ています。財務省出身である黒田総裁が、官邸と取引し、消費税10%を実施する代わりに、援護射撃として追加緩和を行った。あるいは、年内の解散総選挙を実施するための起爆剤として追加緩和を行ったなどというものです。

 実際どうだったのかは、今後の政局の動きを見れば明らかになりますが、いずれにせよ、日銀が、自らの選択肢をある程度使い果たしてしまったというのは事実です。

 米国は10月のFOMC(連邦公開市場委員会)で、すでに量的緩和の終了を決定しています。米国は量的緩和の終了、日本が逆に拡大ですから、今後、円安が進む可能性は高いでしょう。

 円安が進めば、輸入物価は上がりますから、日銀が言うような物価目標は実現が可能なのかもしれません。しかし、物価が上がることと、実質経済が成長することは直接関係しませんから、物価が上がっても景気が悪いということはあり得るわけです(スタグフレーション)。

 私たち消費者や投資家としては、景気が拡大するかどうかにかかわらず、今後、インフレになる可能性はさらに高まったと考えるべきでしょう。そろそろ、本格的なインフレ対策が必要となるかもしれません。

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