経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 政治

財務省人事、岡本次官留任が意味していること

 財務省は2019年7月5日、岡本薫明次官、太田充主計局長を留任させる幹部人事を発令しました。財務省の人事は、消費増税や文書改ざん問題、セクハラ問題などからイレギュラーな状況が続いていましたが、今回の人事によって定常モードへの回帰が進む可能性が高まったといってよいでしょう。

岡本氏と太田氏が共に留任

 今回の人事における最大の注目点は岡本次官が続投するかどうかでした。岡本氏は、セクハラ問題で辞任した福田淳一次官の後任として、主計局長から次官に就任しました。岡本氏は1983年入省で、一貫して主計局を歩んだ本流の人物です。

 もし岡本氏が1年で次官を退任した場合、同期である太田氏が次官に昇進するか、そうでなければ、太田氏も同時に退任し、84年か85年から次の次官が出る可能性が高いという状況でした。
 しかし、84年には有力候補がおらず、85年は前官房長の矢野康治氏、理財局長の可部哲生氏、国税庁長官の藤井健志氏の3人でしたが、矢野氏は今回の人事で主税局長に、可部氏は理財局長を留任、藤井氏は国税庁長官を退任しましたから、この年次から次の次官が出る可能性はかなり低くなっています。

 太田氏は、主計官や主計局次長の経験はあるものの、文書課長や秘書課長といった次官の登竜門と呼ばれるポストは経験していません。しかし、現在、次官にもっとも近いポストである主計局長を留任したことや、官房長人事などを総合すると、次に次官に昇進する可能性はそれなりに高いと考えられます。

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茶谷氏が最有力候補に

 もし岡本氏が来年、次官を退任し、太田氏が次官に昇進して1年で退任した場合、次の次官は86年入省となります。86年入省で次官の最有力候補となっているのは、今回の人事で官房長に昇任した茶谷栄治氏です。

 茶谷氏は、岡本氏と同じく、秘書課長や主計局次長など、次官になるための主要ポストを歴任しており、経歴的には文句無しという状況です。

 太田氏が来年、次官に昇進し、茶谷氏が官房長から主計局長に転じれば、かなりの確率で茶谷氏がその翌年に次官に就任することになるでしょう。

 官僚組織は、外部からの人事干渉を極度に嫌うという特長があり、財務省は特にその傾向が顕著です。ここ数年、政治やスキャンダルに翻弄され、イレギュラーな人事が続いていました。もし茶谷氏が次官に就任すれば、財務省が望む定常的な人事パターンに近づくことになります。今回の人事は、そうした定常パターンへの布石と捉えるのがもっとも自然な解釈でしょう。

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