加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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財政再建が進むドイツ。国債の新規発行がゼロに

 

 財政再建を進めるドイツが、とうとう新規の国債発行ゼロを実現できる見通しとなりました。今後、ドイツは連邦政府の予算を無借金でまかなえるようになります。

ドイツは法律で財政再建を義務付けた
 ドイツのショイブレ財務相は2014年9月9日、2015年度予算について、新規国債の発行がゼロになる見通しであることを明らかにしました。旧西ドイツ時代も含め、新規国債の発行の停止は46年ぶりのことになります。

 ドイツは欧州各国に対して、財政健全化路線を強く主張しており、スペインやギリシャに対しても安易な財政出動を牽制してきました。ドイツは他国に対しても厳しいのですが、自分に対しても同様に厳しく、財政均衡を義務付ける国内法まで制定しています。

 これによってドイツは財政再建が順調に進んできました。この結果が、今回の新規国債発行ゼロにつながっているわけです。

 ドイツはもともと、それほど借金に頼る財政ではありませんが、財政健全化の立法措置のおかげで、政府債務のGDP比は非常に低く抑えられています。

 ドイツの政府債務のGDP比は、ネット(政府が保有する資産と相殺)で約50%、米国が約80%、日本は約140%となっています。一方グロス(資産と相殺しない値)はドイツが約70%、米国が約100%、日本は約250%となります。いずれの数値でもドイツは非常に良好です。

 ドイツが財政再建に成功しているのは、歳出を絞っているからというイメージが強いのですが、現実問題としては、それだけでは財政再建はできません。好調な経済を背景に税収が堅調であることが財政再建に大きく貢献しているのです。

 一時は財政赤字が大変な問題となっていた米国も、このところ急激に財政終始が改善しています。その主な理由はやはり好調な経済による税収の増加です。

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財政を好転させるのは緊縮ではなく経済成長
 日本国内だけを見ているとあまり気付かないのですが、ここ15年の間に、日本は急激に貧しくなっています。

 2000年から現在までの間、ドイツのGDPは2倍に、米国のGDPは1.7倍に拡大しました。世界経済全体も同じような動きとなっています。これに対して日本のGDPは同じ期間でほぼ横ばいの状態です。相対的に見ると、日本の所得は半分近くにまで減少しているわけです。これでは財政再建どころではないのは、ある意味で当然のことなのです。

 ドイツは日本と同様、製造業による輸出で経済を支えてきた国です。ドイツの成功は日本にとっても学ぶべきところが多いと考えられます。

 確かにドイツの製造業が今でも高い競争力を持っているのは、ユーロ圏経済の恩恵という面が大きいと思われます。ドイツの周辺にはポーランドなど低賃金労働を提供する国がたくさんあり、ドイツは低コストで製品を製造することができます。

 一方で、ドイツは欧州全域に為替リスクを負うことなく製品を輸出できます。ドイツの製造業は国際的に見ても非常に有利な立場にあるといってよいでしょう。

 しかしドイツの経済が好調なのは、そのせいだけではありません。ドイツの製造業は構造改革をためらわず、高付加価値シフトを進めてきたことで、競争力の維持に成功しました。ドイツの中小企業の中には、単なる下請けではなく、独自の高付加価値製品で世界に製品を販売するところが少なくありません。

 ドイツの労働者はある意味では日本よりもはるかに優遇されています。失業保険も手厚いですし、充実した職業訓練プログラムを受けることができます。一方で、会社の倒産率は米国よりも高いという、かなりの競争社会でもあります。

 労働者の権利を保護しつつ、一方では常に競争を維持するという、メリハリの効いた政策が、製造業の競争力維持に貢献しているのです。ドイツの財政再建はこうした努力の結果として実現しているわけです。

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